研究課題

脱炭素社会に貢献し、付加価値を生み出す未来の下水道システムの構築

下水処理場をエネルギー供給拠点へと転換するため、下水中の資源を徹底活用して価値を生み出す新規概念の下水処理システムの構築を目指します。高効率固液分離槽と正浸透(FO)処理槽により有機物濃縮と下水処理を同時に実現し、濃縮有機物はメタン発酵槽によりエネルギーへと転換します。メタン発酵に関しては、再生可能エネルギー由来の水素をメタンに変換する技術開発にも取り組み、既存下水処理場のエネルギー拠点化にも貢献します。既存下水処理場からの温室効果ガス発生機構の解明と対策技術の開発等の一連の研究により、脱炭素社会に貢献する下水道の実現を目指します。さらに、下水処理水を活用した大型藻類の培養技術を確立し、蓄積される多糖を基点とした化成品の製造など、付加価値を生むシステムの構築にも取り組みます。

汚水処理施設と農業の連携による地域資源循環システムの構築

水・エネルギー・食料は人間の生存に不可欠な資源であり、各々の相互関係を考慮した地域資源循環システムを構築する必要があります。中小都市における汚水処理施設と農業の連携は、水・エネルギー・食料連環の観点から重要であり、廃水・廃棄物の質を考慮したカスケード型資源循環システムによる価値の創出を目指しています。また、乳酸発酵・光合成細菌・藻類培養などを組み合わせた小規模廃水処理・メタン発酵技術を開発し、メタン発酵を核にバイオマス資源活用の 最適化を図るとともに発酵残渣の肥料価値向上を試みます。さらに、メタン発酵により発生する熱および二酸化炭素を施設園芸ハウスで利用するシステムの検討を行い、地域における価値創造の観点から適切な下水処理場および施設園芸ハウスの配置を検討します。

物理・化学的水処理機構の解明と技術開発

公共の上下水処理において、濃度が極低いにも関わらず、異臭味(上水)、ヒトへの健康影響(上下水)、放流先の水生生態系(下水)への影響が懸念される化学物質や病原微生物の存在が指摘されています。これらの中には、従来の生物反応を活用した処理法では除去しえないものも存在し、紫外線やオゾン、光触媒、吸着材などを用いた物理・化学的な水処理に期待が寄せられています。これらの処理方法の最適な設計や運転のために、実証的検討および理論的解析の両面からのアプローチで研究を行っています。特に、除去対象物質と生成抑制対象物質のバランスの達成、共存物質としての有機物の反応性評価および有機物の処理性能への影響、省エネルギー性に焦点を当てています。さらに、酸化チタン/高シリカ型ゼオライト複合シートを活用した新規の促進酸化処理装置の開発にも取り組んでいます。